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September 2392013

 空港の夜長の足を組みなほす

                           坂本茉莉

港でのフライト待ち。その時間はまことに所在ない。予定時刻をだいぶ過ぎても飛ばなかったりすると、苛々感が募ってくる。そんな気持ちを表現した句だと単純に受け取ったが、あとがきを読んで、考えをあらためた。作者はタイ在住26年。「その間に仕事あるいは私用で、幾度日本とタイを往復したことでしょう。空港や飛行機は、私にとって単なる建物や乗り物以上の意味を持ち、ときに二つの文化を行き来する切り替えのための中継点であり、またあるときは日本にもタイにもなじめぬ心身を癒す休息場所でもあります」。つまり作者には、行楽などのために利用する空港というイメージはないわけで、「足を組みなほす」行為にも、たとえば考え事を組み立て直すきっかけ作りの意味があったりしそうである。これからも国際化時代は進行してゆく。伴って、空港のイメージも大きく変わってゆくのである。『滑走路』(2013)所収。(清水哲男)




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